郊外の書店から

 書店で働き始めてから2ヶ月が過ぎた。せっかくなので気が向いたときにでも業務内容や日々思うことを自分のために書いていこうと思う。

 

 私が働いているのは郊外の書店だ。大きな国道沿いにある路面型の書店。ご高齢の方やファミリー層が多くやってくる。そこそこ大きい規模の売上はたっているが、「お客様が求める必要最低限を揃えている書店」といえば、伝わるだろうか。映画館に例えると小さな名画座というよりはシネコンである。ちなみに、私は名画座も大好きです。

 正社員として働いて2ヶ月、とにかく声を大にして言いたいことは「毎日本に触れられることはとても幸せ」ということである。学生時代も書店でアルバイトをしていたが、やはり棚をいじるのは楽しい。毎日こんなに本が出て、タイトルや装丁だけで惹かれるものがたくさんある。棚の流れはどうか、どのように動いていくかを見ているのは本当に楽しい。紙の質も匂いも、私は好きなのだと思う。だから、書店で働いていることは本当に幸せだと感じている。

 ただ、好きだからこそ気になることも沢山ある。例えば、売れ筋の本だけ並べればいいのかとか。例えば、私の欲しい本が置いてないとか。

 後者に関しては、買うことのできる他店で買うなり、自店で客注するなりをすれば済む話である。そうして今後配本が付けば良いと思う。(もちろん買うお客さんがいないことにショックは受けたけれど…)

 しかし、前者はどうだろうか。売れ筋の本だけを多面展開してそれだけでいいのだろうか。経営面では「売る」ことももちろん譲れない。だけど、本当にそれでいいのだろうか?

 リアルな書店に求められているのは、知らない本との出会いである、と思う。「知らない」といっても、書店に行くと既知の本が「未知」に見えるという現象も含め。棚の中で背表紙が光って見えるような、新しい本との出会いが書店には必要とされていると感じる。

 売れ筋は正直Amazonでわかる。Amazonで買える。

 知らない本との出会いは?美しい本との出会いは?新しい視野との出会いは??

 私が夢を見すぎなのだろうか。郊外にある書店では、「出会い」を提供することは難しいのだろうか。経営だけを見つめ直して、長い目で見たときに業界は窄んでいないだろうか。

 書店での出会いは、新たな読者の獲得も担っていると、私は信じている。まだそれを諦めたくはない。これから、模索しながら業界で働いていく。